toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

清水泰隆「統計学への確率論,その先へ」内田老鶴圃 2019

自分の本棚は自分が長年勉強や研究と格闘してきた歴史であって,それは必ずしも美しいとは限りません.特に大学にいたころは確率統計をろくに勉強してこなかったので,数学科ではどういう風に勉強していくのが王道なのかとかはほとんど知らず,未知の概念に出会うたびに自己流で適当な本を読んではつまみ食いして,わからなければまたほかの本に移るという感じでした.

 

例えば数学科で確率論を勉強した人なら必ず最初の方に出会うはずのラドンニコディムの定理とかも,ちゃんとは知らなくて,いろいろな本にあたりました.私のような怠惰な性格の人間が教科書に求めるのは結構ぜいたくで,文章が平易で,ちゃんと動機づけもされていて,しかもちゃんとした概念が説明されている,分厚すぎない本という感じです.ですが世の中そんな本はほとんどありません.

 

今日取り上げた本は,ラドンニコディムの定理をはじめ,確率論の基礎をわかりやすく書かれていて,著者の清水先生は奥付を見ると非常に若い先生で,また,失礼ながら知らない出版社ということでなんでこの本を買ってみたのか忘れてしまいましたが,Amazon の評価が高かったからだったのかもしれません.なんといっても分厚すぎないところがいいです.もちろんこの本に書いてないことはいっぱいあるのでしょうが,まさに私が適当に買った本の中では当たりの本でした.

 

昔は分厚い教科書でも輪読を活発にやっていたのでなんとかこなせましたが,昨今全く周りで輪読とかが行われなくなったため,分厚い教科書は全部本棚の肥やしとなっています.

 

あと,産総研だとまわりに理論研究者がきわめて少ないことに加えて,情報収集能力が低いせいで,いわゆる定番教科書みたいなのに出会えずに来たというところもあります.まあいろいろ回り道をしてきた分,本棚には味があるといえばあるのかなとは思います.