toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

釜江哲朗「超準的手法にもとづく確率解析入門」朝倉書店 1990

電総研の頃は,年度末になると余った予算を消化するために筑波大の本屋に行ってめぼしい本をみつくろって予算消化をするという行事がありました.単年度会計の弊害で,多少状況は変わってきたとはいえ,現在でも同じように年度末の予算消化で苦労している人は多いのではないでしょうか.

 

この本もたまたま本屋の書棚にあってなんとなくタイトルにひかれて買った本だと思います.超準的手法というのをまったく知らなかったので,そのキーワードがなんだろうという気持ちでした.

 

実際のところ半分くらいは通常の確率論の教科書という感じで,後半から超準的方法という話に入っていきます.ちゃんと読めてはいませんが,要は数学基礎論で確率論を再定式化するという話だと思います.数学基礎論もまた深い領域で,選択公理の話とか数学の形式化という観点でなかなかついていくのが大変な話です.

 

数学を形式化することで,議論や証明の曖昧性を消すというのはわかるのですが,超準解析をすることでのありがたみとか動機づけとかが一切書かれていないので,かなり読むのが大変そうです(ということでほとんど読めていません).

 

超準解析という言葉は斎藤正彦先生が Nonstandard analysis の訳語としてつけられたということで,本来は斎藤先生の著作を最初に読むべきだったかもしれません.斎藤先生自身が書かれたあとがきを読むと,測度論ではなくむしろ高校生とかで習う組み合わせ論的な確率論に近いのが超準解析だという説明があり,それならちょっと勉強してみようかという気になりますが,本文中にはまったくそういった説明はありません.