toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

J.O. Ramsay, B.W. Silverman "Functional Data Analysis" Springer 1997

関数データ解析という分野があって,たぶんその基本的な本がこの本なのだと思います.SVM が出てくるまでは関数の世界というのはよく知らない世界でした.大学の時の関数解析とかバナッハ空間とかヒルベルト空間とかなんだか脅しの効いた言葉が出てきてはじき返されていました.

 

実用的には「関数=ちょっと次元の大きいベクトル」くらいの認識でよいと思うのですが,数学的に厳密な話をしようとすると無限次元とかが急に気持ち悪くなるということだと思います.そういう話を気にしだすと,なんだか本質的じゃないところの議論という感じで私はちょっと興味が薄れます.ただ,無限になると急におかしなことが起きるとか,そういうことは知的好奇心には訴えてきますが,その手の話だと,ガウス過程の RKHS ノルムは発散するとかそれくらいでしょうか.(この本にはガウス過程の話は出てこないので完全に話題が脱線しています)

 

リプレゼンター定理というのは重箱の隅という感じではなくて好きな定理ではあるのですが,よく考えると実用面では大して意味はない気もします.データ数がある程度あれば,関数としての記述力は十分高いので,データ点のカーネルだけで書けると言っても実務家にとってはああそうですかという感じでしょう.それよりも,私のカーネル本には書かなかった,より少ない基底で近似する話の方が実用面では余程役に立ちます.

 

こうして考えてみると,私の興味のスポットというのは,関数解析のごちゃごちゃした話でもなく,計算の工夫でもなく,そこそこきれいで単純な理論の部分にあるのだなあと思います.