toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

犬井鉄郎, 石津武彦「複素函数論」東京大学出版会 1966

複素関数論の教科書はこの本でした。計数を含む応用物理では進振り後に2年生の後期に複素関数の授業があったと思います。それまで複素関数は実部と虚部の2変数関数の延長線上くらいに思っていたのが、正則関数と一致の定理とか、解析接続とか、留数を使った複素積分とかで、思ってもいなかった数学の世界が広がった気がします。

 

とはいえ、自分が複素関数論を使った研究をしたことはないのですが、ガウス分布フーリエ変換とかいろいろな場面で複素関数論がからんできます。また、修士時代に正の相関を持つ対称相互結合ニューラルネットの記憶容量を計算する際に、鞍点法を使うのですが、その延長線上として負の相関をもつ場合には、自然に定式化すると複素数値をもつ確率値が出てきて、それをどう扱ったらよいのかわからなくなってその問題は放置されたままになっています。それ以来複素数と確率とは若干相性が悪いなという偏見が身についてしまいました。

 

カーネル本を書く時も、複素数の範囲で書くこともできたと思うのですが、最終的に実数値にするあたりで気持ち悪さがあって、最初から全部実数値カーネルだけで書きました。代数幾何学とかほとんどの現代的な数学は複素数ベースでできているので、実数値関数だけとか、ちょっと恥ずかしい感じですが、やはり自分が自在に操れる範囲内でしか本とかにするのは難しいです。