toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

N.N. Cencov "Statistical Decision Rules and Optimal Inference" AMS 1982

甘利研に入って初めて情報幾何というものがあることを知ったわけですが,勉強合宿とかで黒瀬さんとか中村佳正先生の難しい話を聞いている限りはほとんど理解できませんでした.甘利先生と議論されているやりとりを見ている状態は,まさに空中戦を地上から見てぽかんとしている感覚でした.それでも,甘利先生の言葉は学生にとってもなぜか理解できるという不思議さがあり,それは甘利先生がすごいのと,数学科と計数工学科の数学を語る言語の違いがあったのかなと思います.

 

チェンツォフのこの本は割と最近買ったものですが,甘利先生のシュプリンガーレクチャーノートよりも古くて,双対座標系とか情報幾何の基本概念が述べられています.ただし,ピタゴラスの定理とかはまだ知られていなかったようです.

 

私はEMアルゴリズムの幾何を調べるあたりから情報幾何の勉強を始めました.まだ大してわかっていなかった頃に栗田さんからだったと思いますが情報処理学会の会誌に解説記事を書きました.前にも書きましたが,その頃には甘利先生がすでに EM の幾何についてはかなり深くやられていて,私のやったことは世の中にはほとんど意味がありませんでした.

 

ただし,それでもその後いろいろなところで情報幾何の解説や講演をさせていただいたのは,そういうことにもめげずに細々と勉強をしてきたからだと思っています.情報幾何の次元縮約の話を思いついてから,途中ブランクはあったもののいまだにそのテーマに関わっていられるのも甘利研に所属するという縁があったからこそだと思います.

 

数理科学に解説を書いた後に,東北大・産総研連携ラボみたいなところでセミナーをしました.そのときにいたのが中村壮伸さんというパワフルな方で,いろいろ突っ込まれると自分の情報幾何への理解の浅さを思い知ってこの本を買った覚えがあります.そのときは岡田研出身の徳田さんとか,唐木田さんも参加されて楽しい仙台滞在でした.

 

中村さんとはその後彼の本業のパーシステントホモロジーの解析などでお世話になっており,いろいろとつながっているのだなあと感じます.