toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

田村一郎 「トポロジー」 岩波書店1972

位相幾何学が、マグカップとドーナッツを同じにみなすというような一般的な知識はもっていましたが、実際にそれをどう数学的な道具立てを使うかというのは、全く知りませんでした。

 

ちゃんとした講義としては、甘利先生の位相数理工学の講義でしたが、以前にも書いたように甘利先生の講義は直感的に訴えかけるもので、なんとなくわかったような気になって、実際には全く分かっていないというたぐいのものでした。この本はたぶん最初の頃に買った本だと思いますが、とりあえずこの本くらいのレベルが学部レベルでは必要かつ十分な感じだと思います。

 

そもそも位相空間という話からして普通の大学生からすると目新しい話で、そこから群論、特に商群がいっぱい出てくるので、最初の頃は一つ一つ頭の中のイメージを整理しながらで理解が大変でした。

 

実際に位相が研究で重要となるようなことはあまりなく、独立成分分析がらみで直交群やシュティーフェル多様体、旗多様体、グラスマン多様体なんかの割とイメージしやすいものはだいぶ慣れましたが、より一般化された議論になるとイメージがいまいちつかめないのは今でもあまり変わりません。

 

当初マグカップとドーナツを同一視したらまずい場合も多いと思っていたところに出てきたのがパーシステントホモロジーで、スケールを変えてみると違って見えたり同じに見えたりするのは、ウェーブレットとかの多重解像度解析とも通じていて、そのあたりは割と腑に落ちたところです。