toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

田中久美子「記号と再帰: 記号論の形式・プログラムの必然」東大出版会 2010

田中さんは電総研に一瞬だけ所属されていたことがあり、私のかすかな記憶では新人研修の時に情報数理にも来られて、私がEMのデモかなんかを見せたら鋭い突込みをされたことがありました。たぶんすぐやめられてしまったのでそれ以外にお話しするとかはありませんでした。

 

この本はプログラミングの必然性を哲学的に論じた本です。何度も書いていますが、哲学の本はなぜか文学的なレトリックを駆使して内容がよくわからない本が多いですが、田中さんが計数(和田研)出身ということもあり、たぶんベースとなる知識がかなり共通していることもありわかりやすい本だと思います。

 

ただし、やはりだれそれが何と言ったかとか過去の哲学者をやたらと引き合いに出してくるので本質的にはどういう学術体系のもとでの議論なのかがよくわからなくなってしまうと思います。この本は大川なんとか賞という賞も受賞している本なので、たぶん私のような意見を持つのが少数派なのかもしれません。あとは、もともと英語のものを日本語に逆翻訳しているところも、日本語として若干不自然さがあるのかもしれません。

 

私は少なくとも大学生までは本の虫でしたし、その後も割といろいろな本を読んできたと思いますが、文学の芸術的な価値というのはあまり理解できていないように思います。というよりも芸術そのものがよくわかっていません。文学賞の評論とかで、表現技巧が傑出しているとかなんとか書いてあるのを読むたびに、そういうのってどのような基準があるのだろうと思ってしまいます。それは絵画や書についても同じです。所詮素人なので自分が感動できればそれでいいのですが、文章に関しては多少は自分の仕事ともかかわりがあるのでもう少し理解したいという気持ちはあります。