toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

佐川 弘幸、吉田 宣章「量子情報理論」シュプリンガー 2003

量子力学の状態の重ね合わせを使って量子計算機や量子通信といった技術が将来に実用化されればこれまでの計算や通信にとってすごくブレイクスルーになることは確かだと思います。ただ、少なくとも今の日本でこれらの実用化を近い将来実現することは無理だと思っています。

 

ディープラーニングの場合、第3次ブームが始まった当初、私はまた一過性のブームだと思っていずれ終わりを迎えるだろうと思っていました。しかし、Google や中国などの研究にかける桁違いの投資が現在のAIのブレイクスルーをけん引しました。そのあたりは全く見る目がなかったと思います。今の量子計算にはやはり Google や中国などが多額の投資をしているので、もしかすると私の予想に反して実用化が早く訪れるかもしれませんが、少なくともそれは日本発ではないように思います。日本は予算のつけ方が中途半端でしかも遅いです。こういうやり方ならバラマキで広く浅くお金をまいた方がずっとましに思えます。

 

以前よく、梅山さんが、一定以上の量は質的変化を起こすというようなことをおっしゃっていて、あまりぴんときていませんでしたが、ディープラーニングは予算的なことでもそうですし、学習能力についてもデータ数とパラメータ数の増大が従来とは質的な違いをもたらしています。物理で言えば相転移的なことだと思います。

 

子供のころ、家族でよくキャンプに行ってバーベキューをやりました。海だと愛知県なら篠島とか日間賀島、山の方なら川沿いのいたるところでキャンプをしました。昔はおおらかでしたし、今のようにたくさんの人がいなかったので、適当に行って適当な場所でキャンプをしても問題ありませんでした。とはいえ、自然の中なので、一度、海で急に嵐に見舞われて、自分と妹だけ海から上がってどこかに小屋に避難しましたが、父親がまだ海の中にいて兄弟で父親を案じながら不安な時間を過ごした記憶があります。話が脱線しましたが、バーベキューで火を起こすときに、最初に集中して相転移点を超えさせないといつまでたっても強い火にはなりません。子供の頃は下手でしたし、大人になってからキャンプに行っても相変わらず下手でした。

 

論理が飛躍しますが、火を起こすのが下手なのと、自分がディープや量子といった莫大にいろいろつぎこむプロジェクトが苦手なのと共通しているような気もします。そういえば子供の頃は風船をふくらませることもできませんでした。あれも最初にあるしきい値を超えないとふくらますことはできない代表例でした。