toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

相磯秀夫,甘利俊一(監修)「ニューロコンピューティングへの挑戦」三田出版会 1989

第2次ニューロブームを現代的な視点から眺めてみます.


この本は,学生時代に甘利先生のところに献本されたものを譲っていただいたという記憶があります.そもそもこの中のアービブの講演をカセットテープから和訳書き起こし頼まれたと思います.(たぶん全然内容分かってなかったから結局ほとんど採用されなかったと思いますが)

甘利研と電総研・産総研の先輩である麻生英樹さんや電総研同期で現東工大の秋山泰さんなんかも書かれています.そのほか合原先生とか安西先生とかの超大物が入っているのは当然として,大石進一先生とかも入っているところが意外というか流石という感じです.

この本が出版されて30年くらい経って当時と今とを比べると,脳科学については正常進化という感じで,計測技術は発達したものの生物を理解するのはなかなか大変だなあと思います.ロボティクスやコンピュータビジョンについてはまだまだ実用という感じではなく,今後どうなるかがまだ未知数というのが文章の端々に感じられます.
ハードウェアもこの頃からいろいろ出てますが,今のような GPU のような考えでやるという話はまったくなく,光とかアナログとかの検討が主体です.光は最近聞かないですが,アナログ(というかパルス型)で消費電力を抑えるというような話は何かブレイクスルーが起きるかもしれません.

割とポジティブな原稿が多い中,志村正道先生が,「AIとニューラルネットは全く違う」とはっきりおっしゃっていて,ある種の潔さを感じます.書かれている内容自体は現代的な観点からすると正確ではない部分もあるのですが,過剰なブームに対する警鐘やその時代における技術レベルを適切に評価する必要性などは今の時代においても重要かなと思います.現代はディープラーニングやデータサイエンス一色で,よくわからずのっかったり論評したりする人たちが多いですが,こうしたバブリーな雰囲気はちょっと危うさも伴っていると思います. 特に霞が関の役人の方々には正しい知識で判断してもらいたいものです.