toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

大津由紀夫(編)「ことばからみた心 生成文法と認知科学」東大出版会 1987

電総研の情報科学部には,私のいた情報数理,中島さん・仁木さんとかがいた認知科学,山根さん・設楽さんがいた脳機能の3研究室がありました.分野的には情報数理と認知科学は近いはずですが,なんとなく捉えどころがないような感じがしていました.仁木さんはその後むしろ脳科学に近い方向に行かれました.この本は認知科学のシリーズで,言語心理学の本です.言語というのは1個人としては興味があるものの,研究者としてはとても近寄れない分野です.しかも LLM の登場で分野が一大転機を迫られているような気配もあります.

 

さて,それとは直接関係ありませんが,以前2か月ほど専門短期育成事業というプログラムで2か月ほどだったと思いますが安村さんという方を受け入れたことがあります.もともと違う職種に就いていらっしゃった方にデータサイエンスのようなスキルを短期で身に着けてもらうということで部門から頼まれて引き受けました.

 

PRMU とか勉強してもらって当時なんだったか忘れましたがプロジェクトのデータ解析のお手伝いみたいなのをやっていただきました.Rとかの習得もして順調でしたが,その後の就職先のような話になったときに,研究者を目指して博士課程に進学したいということになり,興味を持たれていた流れから,認知科学研究室から東大に移られた開一夫さんを紹介しました.開さんとはむちゃくちゃ親しかったわけではないですが,気さくな性格で情報科学部のイベントとかでよくご一緒しました.

 

安村さんの印象はわりとおっとりされている感じでしたが,育成事業のプログラムに応募したり,博士進学を積極的に希望されるなど,内に秘めているものがあるのだなと思います.私のところは2か月程度で終わってしまったので,忘れられていても不思議はなかったのですが,開さんのところで学位をとって,その後いくつか職を経て今は熊本大でしっかりとした研究者になられたようです.そのたびに連絡をいただいて,私自身はきっかけを作ったに過ぎないですが,こうして人がステップアップしていくのを見るのはうれしいものです.大学の先生なんかはより強い絆でこういう体験を日々されていると思うので,そのあたりは羨ましいと思います.