toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

David Marr "Vision" MIT Press 2010

David Marr のこの本はもともと 1982 年発行ですが、原著が絶版になっており私は on demand 版で入手しました。白血病で若くして亡くなられた伝説的な神経科学者で、この本も没後に出版されたものです。

 

小脳パーセプトロン説とかすばらしい業績もありますが、自分にとっては計算論的神経科学における3つのレベルの話が神経科学に限らず影響力が大きい話だと思います。

 

3つのレベルが強調されたのは、岡田さんが代表をされたスパースモデリングの新学術でした。スパースモデリングでは、天文の本間さんや惑星科学の宮本さんなど有名研究者のオンパレードという感じでしたが、それらの自然科学分野と情報科学分野を融合する研究というのは、脳科学で岡田さん自身が身をもって感じてきたと思いますが、たやすいものではありません。

 

そこで岡田さんは Marr の3つのレベルの話を主軸において、それぞれの研究者の役割や研究におけるレベルを明確にすることで混迷を避けるという方策を取られたわけですが、それが奏功してスパースモデリングのプロジェクトは非常にうまく回りました。

 

私も2番煎じにはなりますが、この手の応用と基礎の共同研究においては Marr の3つのレベルを念頭に置きながらプロジェクトを進めるようになりました。スパースモデリングの中では私はどちらかというと弱小計画代表で劣等感にさいなまれることも多かったですが、岡田さんにフォローしていただいてなんとか無事にプロジェクトを終えることができて感謝してもしきれません。

 

スパースモデリングは一度NHKサイエンスZEROに取り上げられて、岡田さんが出演されましたが、すべての計画班・公募班のタイトルと代表名が表示される瞬間があり、私も名前だけ一瞬テレビデビューすることができました。