toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

伊庭斉志・ダヌシカ ボレガラ「東京大学工学教程 情報工学 知識情報処理」丸善出版 2016

電総研に入ってしばらくして遺伝的アルゴリズムいわゆる GA のブームがやってきました.電総研同期入所の伊庭斉志さん,秋山泰さんのほか,佐藤泰介や,亡くなられた田中勝さんなんかといっしょに勉強会をやりましたが,なぜうまくいくかという議論になるとかなり怪しげな話が多くなり,やや消化不良の感じで,自分自身の仕事として深めていくことはありませんでした.

 

しかし伊庭さんはその後 GA や GP(遺伝的プログラミング)といったフィールドで仕事をされていきました.東大に移られてからはほとんどお会いすることはなかったのですが,どこかの国際会議で一度だけお会いする機会がありました.

 

勉強会を開いていた当時は本も何冊か買ったような記憶もあるのですが,本棚の奥底に埋もれてしまったのか,今のところ伊庭さんの書かれたこの本しか見つかりませんでした.

 

遺伝子や進化といったものは,脳や知能と同じく人を引き付けるミステリアスな存在です.進化に関わる本もたくさん買ってはいますが,そこで繰り広げられるいろいろな論争などについてはあまり理解はできていません.それらの謎の論争とGAがなぜうまくいくのかみたいな議論がごっちゃになってよりこの分野を理解することが難しくなっています.ということで私自身は GA から離れてどちらかというと MCMC のような数理的に見通しの良い方法に興味が移っていきました.これは統数研の方の伊庭さんの影響なんかももちろんあります.

 

秋山さんは遺伝子情報処理の方面に進めれましたが,その関連の話はまた稿を改めたいと思います. 

 

あと,RWC ではドイツ GMD の Muellenbein という人が GA をやっていて,そのつながりで麻生さんが GMD で GA 関係の在外研究されていました. Muellenbein は豪快な感じの人で,私も麻生さんがドイツに行かれるのとすれちがいぐらいにボンの GMD に訪問しました(以前書きましたがその時に室田先生にお世話を書けました).

 

ちなみにこの本は知識情報処理ということでタイトルから内容を想像するのは難しいのですが,いわゆる機械学習や統計の人とはやや違った書きぶりで探索や検索といった話が書かれています. あと,この東大の工学教程というのはシリーズものですが,レベルや書きぶりもさまざまです.この本は比較的平易に書かれている方だと思います.