この本も現在は改訂3版が出ていて内容も更新されていると思いますが,生物系の学問というのは実験してもはっきりしたことをいうのが難しく,地道に少しずつ開拓していく分野なのだと思います.
脳神経科学と一口に行ってもすごく幅広くて,私も少しはかかわりがある方だと思いますが,編者の先生方はほとんど知らない方ばかりです.執筆者の中でも,スパースモデリングでごいっしょした谷藤先生くらいでしょうか.谷藤先生は我が道を行くという感じの研究者で,プレゼンとかもかなり工夫されている感じでした.ただ情報が伝わればよいという私のようなタイプとは真逆な感じです.
この本は広範な脳神経科学の大枠を割とコンパクトにまとめた本で,図が多くて読みやすいです.昔脳科学大辞典という本の一部を執筆したことがありますが,あれは脳科学をざっくり知るには分厚すぎて難しいと思いますが,この本はパラパラ見ているだけで様子がわかりやすいです.
脳科学と言えば動物実験が切っても切り離せませんが,産総研では動物実験に対する風当たりが強いです.産総研に限らず動物愛護団体からの宗教がかった脅迫めいた話もあるということを聞きましたし,そもそも産総研では幹部がそういうトラブルを嫌うので内側も必ずしも味方になってくれないという四面楚歌な状態です.
電総研時代から伝統のある脳科学研究がなんとなく先細りして行っているのをすごく危惧しますが,いかんせん私個人の力ではどうしようもありません.