toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

Martin H. Weissman「図解する整数論」丸善出版 2022

数論というのは数学の王様という感じで、フェルマーの大定理とか一般の人にもなじみがありながらその頂上は果てしなく高いという学問です。大阪大学に連携大学院で行った際に数学科の先生方とお話しする機会があって、それまで知らなかった数学者のいろいろな話が聞けました。

 

特に日本の数学では数論とかがえらくて、たぶん応用数学とかは身分が低いみたいな意識は当時の阪大の数学科にはありました。

 

私自身は数論とは全く縁のない世界で研究してきましたが、やはりその高みを見てみたいなと思ってこの本のタイトルに惹かれて買ってしまいました。いわゆる幾何学のような感じの可視化ではないですが、たぶん全く図がない状態に比べればはるかにわかりやすくなっているのだと思います。ただ、いかんせんがちな数論の本には全く触れていないので比較というのが難しいです。

 

阪大の数学科は、当時情報数学系と統合するとかしないとか組織再編の話で揺れていました。今の時代どこでも起きそうな話です。大学が産総研に比べて大変だと思うのは、そのあたりの設計も教授クラスの人たちがわいわい議論することで、声が届きやすくなる半面、負担が半端なく重いことです。一方、産総研は研究グループ長や下手をすると研究部門長クラスも大した権力はなくて、もっと経営層に近いところが勝手にいろいろ決めてしまう組織で、全く下の声が届かない代わりに、それに労力を割く必要がありません。まあ今のように上の方が理不尽でも声が届かないのは不幸な研究所ではあります。