toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

安西祐一郎「認識と学習」岩波書店

現在においてこの本を読み返す価値はあまりありません。しかし、安西先生のその後の経歴と、岩波からこの分厚い本が出版されたという事実はいろいろなことを考えさせられます。

 

安西先生とは直接面識があるわけではなく、どんな研究をやられた方なのかもよく知りません。ただ、慶應の塾長をされたり、そのほか政治的なところで名前をよくお見かけします。私の中では研究者というよりはそういう役回りの人ということで自分とは違う世界の人なのだなという認識です。ニューロブーム真っただ中にのっかったというのもあるかもしれません。

 

一方、自分はまったく政治的なところとは縁遠い存在なのだと思います。そもそも人との付き合い方をよく知りません。こんな私も産総研になってから20年にわたり情報数理研究グループのグループ長という仕事をやらせていただきました。情報数理という名称は私が入所する前から多少の名前を変えてこれまで50年以上の歴史のある研究室ですが、産総研の中では常に隅っこに追いやられた存在です。

 

実際、私がグループを任されてから、神嶌さんをはじめとして、研究所の理不尽な扱いを受けた研究者の駆け込み寺みたいな場所でした。

 

私は人に頼んで何かをしてもらうということや、わからないことを人に聞くということが極めて苦手です。最近では多少ましにはなりましたが、若い頃は本当にひどくて、友達にすら何かを頼んだり誘ったりできなかったですし、旅行に行って道に迷っても人に聞くことができずに無駄な時間を過ごした経験が数知れずあります。

 

こんな私が曲がりなりにもグループ長という役職を引き受けたので、上から降ってくるいろいろなことをグループのメンバーに頼むということもできませんでした。結果的にそれが研究以外の理不尽なことからメンバーを守っていたことになっていたのだと思います。ただ、現在はその役職もくびになりましたし、最近はそういうことを避けるために、一度企画部門などに出向して上層部の考え方を洗脳してからじゃないとグループ長にはなれなくなりましたし、上層部はグループ長を介さずに理不尽なことを直接メンバーに伝えるような仕組みをいろいろ編み出したので、グループ長が防波堤になれることが少なくなりました。

 

まあ研究所の行く末は暗いですが、私個人についていえば、一度も出向もせず、自由な環境で研究できたのは本当に幸運だったと思います。