先日取り上げた Huber の robust statistics の中に L-estimator というのが出てきて、ここで統計勉強していない私がはじめてちゃんと順序統計量というものに出会いました。ということで順序統計量についてちょっと知りたくなってこの本を買いました。
書名からすると相当易しそうな本ですが、きっちりと順序統計量の基本的な数理が書かれていて、これ読んでおけば自分にとってはとりあえず十分な内容です。ときどき順序統計量の分布、特に最大値とかの極値統計とかの分布を知りたくなることがあって、そのときもこの本のお世話になりました。ただし、順序統計量業界のことは全然知らないので、この本や著者の方々が有名なのかどうかとかは全然わかりません。
産総研では、標準化に関する研究もおこなわれていて、私の所属している部門でもそういう関係の仕事をされている方がいらっしゃいます。そんな方のおひとり(直接の面識はあまりなかった)から、「ISO標準ではこういう風に定められているんだけどなんか実情と合わないのですがどう思いますか?」という相談を受けたことがあります。
いろいろとお話を伺うと、結局順序統計量の分布で説明できる話のようで、この本で調べてお答えしました。ただ、標準業界というのはいろいろ複雑なようで、デファクト的にソフトウェアとかで使われている方法が流通していて、それを正すというのもなかなか難しいということでした。まあ、「正しい」と言っても、この順序統計量の分布を導出する際に置かれている仮定が現実にどれだけあっているかという話もあります。
標準をやられている方と話していると、標準の研究というのが我々が普段やっている研究とは結構違う方向性をもっているなということを感じます。標準というのは非常にゆっくりとしたタイムスケールでしか変化しないものを決めようとしているのに対し、我々が研究しているのは常に新しいもの、過去を塗り替えるものを志向しています。最近はパーソナライゼーションという話もあって、標準化というのが意味を失いつつあるような気もするのですが、標準研究の方からは標準なくして前に進めないというような感じを受けます。いろいろな価値観があるので、なかなか難しい問題だと思いました。