toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

Alfred Gray "Modern Diffential Geometry of Curves and Surface" CRC Press 1993

書棚の本はまだほとんど減っている感じがありませんが,読んでない本や今まで取り上げたトピックとかぶる本が多くなってきて,どの本を選ぶかが難しくなっています.あと,記憶の大部分のネタはすでに書き尽くしてしまった感じがします.それでもたまに脳の奥底からわいてくる記憶の小さな泡沫をつかまえて少しずつ書いていこうと思います.そもそもほとんどの毎日は何も起きない日常で,特に最近は個室で過ごして誰とも会わずに帰ることも多いので,最近は記憶の地層には何も降り積もっていかないという状態です.

 

さて,この本は微分幾何を視覚的な観点で解説した本です.情報幾何とかいまいちよくわかっていない時期に易しめの本ということで買いました.Mathematica でほとんどの図は再現することができます.

 

Mathematica は情報数理でライセンスがあって,電総研に入ってまもなくは結構使い込んでいました.その後田中さんが Maple 派だったので,Maple で数式計算をやったりしていました.独立成分分析の高次統計量の計算とか面倒な計算はたいてい Maple でやっていました.言語としては Mathematica の方が美しい気がします.MathematicaMaple もライセンスを維持するのが面倒になって今ではもうどちらも使っていません.むしろ無料の Maxima を時々使う程度です.世の中的には SimPy とか使うのがよいのかもしれません.

 

この本はビジュアル優先で,見栄えのする曲面の可視化が多く,しかもユークリッド空間に埋め込まれた計量的な多様体がほとんどなので,情報幾何を勉強するには実はあまり合っていません.情報幾何で双対平坦な座標系で書くと,見栄え的には単純すぎてこういう本にはあまり向いてないとは思います.その単純さゆえに情報処理が簡単になるわけですが,私がそうしたことがわかるようになったのは,この本を買ったよりも後で,EMの情報幾何の解説を(栗田さんからだったと思いますが)依頼されて情報処理学会の会誌に書かせていただいたころからでした.解説記事を書くというのは遅筆の自分にはきつい仕事ですが,頭の中の整理ができ,かつ,自分の知名度も上げることができて,これまで私のようなものに依頼していただいた方々には感謝の気持ちがいっぱいです.