toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

衛藤 瀋吉、公文 俊平、渡辺 昭夫、平野 健一郎「国際関係論」東大出版会 1982

政治や経済には疎い人生を送ってきましたが、駒場キャンパスには当時、大きな立て看板、通称「タテカン」が所狭しと並んでいて、さまざまな政治思想が掲げられていて、安保闘争など子供のころあったさまざまな出来事の雰囲気が色濃く残っていました。

 

国際関係論は教養の文系選択科目として選んだ科目の一つで、大教室に膨大な数の学生たちが出席していました。右とか左とかそういう区分けにはあまり興味はないのですが、国際関係論の講義の最初の方で核抑止力は絶対必要みたいなことを講義で言っていて、ちょっと反発心をいだいたような記憶があります。ただ、ある種の無法地帯である国際社会では、核抑止力のようなやり方でしか秩序を保てないというのは、人間というものがいかに未熟な存在であるかということを認識するきっかけになりました。この本は私が入学する少し前に出版されたものなので、そうした概念の整理をまさにおこなっていたのだと思います。

 

それにしても大学というのは昔はもっと力が強くて、学問のためなら政府にも口を挟ませないくらいの気概があった気がしますが、いまでは役所の言いなりのように思います。電総研は昔からややお役所気質はありましたが、それでも研究所として機能していました。それが崩れたきっかけは独立行政法人化で、それまで対等だった関係が、バランスが崩れて役所優位になった瞬間でした。

 

独立行政法人化になった当初は甘い話がたくさんあって、実際最初は役所と民間のいいとこどりみたいに、予算の自由度が格段にあがったりして研究もやりやすくなったと思った瞬間が数年間だけあったのですが、その後はどんどん制度がもとにもどっていって、今では役所と民間の悪いとこどりと言える状況になっています。私自身はなんとかまだ最悪の状況を避けて卒業できそうですが、この先長い若い人たちが気の毒です。とはいえ、これだけ下からの声が届きにくい組織作りが完成してしまうと私ごときにはどうすることもできないのが歯がゆいところです。