toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

T. Hastie, R. Tibshirani, J. Friedman, "The Elements of Statistical Learning: Data Mining, Inference, and Prediction" Second Edition 2009

電総研から産総研になって程なくこの有名な機械学習の教科書の第1版を輪読しました。

 

国の機関から独立行政法人になって何が起きるか戦々恐々としていましたが、初めのころは研究者にとってむしろ自由度が高い環境になっていたと思います。運営費交付金の繰り越しが自由になったり、低額の立て替え払いもスムーズにできましたが、だれか一人悪いことをしたり、あるいはほかの組織で問題になったりすることで、今のように不自由な環境へと変化していきました。研究所というのは本来研究者の寄り合いのようなものだと思うのですが、社会的には組織の責任を問われることが多いので、どんどん研究がやりにくくなっています。まあこれは産総研に限らない話ですが、大学に比べると役所の言いなりみたいに感じることも多いです。

 

さて、本の話に戻ると、SVM やアンサンブル学習なんかの新しい手法が次々と生み出されていた時代で、その一つの区切りとしてこの本やビショップ本のような教科書が出てきました。こちらの本は統計学中心という感じで、私のような統計学と少し離れた世界で育った人間にはかなり難しくて、1行読み進むのにほかの論文なんかを参照しないとわからないことも多く、「ターヘルアナトミア」輪読と呼んでいました。

 

同じような教科書でも、物理出身でニューラルネットとかを通ってきたビショップの教科書は割となじみがあってわかりやすかったと思います。ただ、この Hastie 本を読んだおかげで、かなり統計学的な用語や概念にも慣れることができたので、輪読したことにはかなり意味がありました。

 

ビショップ本に続いてこの本も翻訳されました。ビショップ本の翻訳は主に神嶌さんのつてで翻訳者を探しましたが、こういう教科書は英語で勉強すべしとか、研究者のやる仕事ではないというような厳しい意見をもらいながら進めたのを覚えています。結果として、ビショップ本は機械学習の勉強をする閾値を下げて日本国内に研究者を増やしたと思うので翻訳に携われてよかったと思っています。