toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

J.J.ギブソン「生態学的視覚論」サイエンス社 1985

最近はあまり聞かなくなりましたが、視覚AIや脳科学の視覚研究で一時期ギブソニアンと言われる人たちがたくさんいました。この本はその元祖的なギブソンが書いた視覚に関する本です。ただ、私にはあまり合わない感じなので実際のところほとんど読んでいません。

 

一つは、ギブソニアンとか言われるように、何かを奉っているところに宗教的な胡散臭さを感じてしまいます。

 

もう一つは、本の中に数式が一つも出てこないことです。研究者の理解の仕方にはいろいろあると思いますが、私は自然言語だけで書かれたものへの信頼感が低いです。自然言語は多義的だし、アナロジーとかを使って煙に巻くような人もいるので警戒してしまうところはあります。一方、数式であれば何を言いたいかが明確にしやすいと思います。もちろん数式だけでも自然言語だけでもダメで、行ったり来たりする中で理解していくのだと思いますが、論理の必然性とかを表すのにシンプルな数式というのは欠かせないように思います。まあ、これは人によるとは思います。

 

また、まえがきやあとがきは少なくとも読みましたが、結局のところ何がしたいのかがよくわかりませんでした。不変性とか情報抽出とか能動性とか関連性が深いワードはかすっているものの、現代の数学や工学で語られているものに比べるとずいぶんあいまいで場当たり的な感じを受けました。

 

あと、当時のギブソニアンを称する人たちのプレゼンテーションも必ずしもわかりやすいものではありませんでした。アフォーダンスというものがあって、それが勝手に我々の認知に働きかけてくれるから我々は何もしなくていい、というような怪しげな説明だったと思います(たぶんこれは全然正しくないのだけど)。

 

ということで、知らない世界があるのは気持ち悪い気もしますが、この本を深く読むことはないかなと思います。