この本を買ったのは、当時マドンナのヌード写真が載っていると噂になったからですが、東大の教養の教科書ということもあります。
読んでみると、文系の研究とは何かという内容になっています。マドンナについても真面目に論説されています。ただし、やはりこれを読んでも文系の研究とはどういうものかは正直腑に落ちる感じはしませんでした。
冒頭に、理系の研究も万能ではないという主旨のことが書かれていて、それは結果としては正しいのですが、そこで持ち出されているのが不確定性原理や不完全性定理で、たぶんこれらは理系の研究の欠点を持ち出すには不適切過ぎる例だと思います。むしろ複雑系とかを持ち出す方がよかったかなと思います。
多くの方が執筆されていますが、松原望先生が統計学について語られています。ただし、明らかにほかの章からは浮いています。統計学は理系的な研究の最たるものだと思います。まえがきに書かれているように、数値化できるかできないかが、文系と理系をざっくりと分けるものだとすると、統計学は数値化することで議論する対象だからです。
文系は自然言語で書かれますが、レトリックやアナロジーを使っていくらでも誤魔化せるような気がするので、数値化できないならできないなりに、数式ではなくとも論理的に表現する「言葉」を持つべきだと思いました。
そもそも産総研にいると、理系とはいえ、単なる開発にすぎないようなものも多くありますし(開発は広い意味では研究かもしれないですが)、この本で扱うような文系的な研究、すなわち、レトリックやアナロジーでよくわからない結論を導き出す研究というのも数多く見かけます。また、そういうのをありがたがる人たちがいるのは、宗教のような感じで若干の気持ち悪さを感じます。