toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

北川敏男「制御情報論II」共立出版 1992

北川敏男先生の現代における位置づけというのはあまりちゃんと理解していませんが、この共立出版のシリーズは以前取り上げた情報量統計学をはじめとする共立出版の大シリーズの編者だという認識はしていました。この本はその中で北川先生自ら執筆されたものです。内容は制御と統計を合わせたような大枠に関する本で、数理的な話からマネージメントに至るまで製造業を中心に幅広い話が書かれています。

 

話は若干飛びますが、昔は機械学習という言葉は身近にはありませんでした。計数工学科では、「数理工学」というキーワードで専門を表すことが多かったように思います。数理の先生方は、純粋数学とは違い、また応用数学でもない数理工学というのを志向されていました。実際は応用数学に近いとは思いますが、数学を応用する学問というよりは、応用のために新たに数学を創設するという感じでした。学生にとってその奥深い意味を理解するのは難しいことでしたが、日本では純粋数学が偉くてそれ以外の数学は一段下みたいな時代があったように思うので、そういう考え方に対する一種の反骨でもあったのかなという気がします。

 

工学というと何か「作る」イメージですが、数理工学はもう少し広い概念のように思います。今日取り上げた本はかなり製造業中心ですが、機械学習の数理的な研究の舞台はいわゆる狭い意味での工学を飛び出して、生物学や物理学などありとあらゆる分野に広がっていて、それぞれ独自の「数学」を作ろうという動きがあるように思います。自分はものづくりは苦手ですが、この広い意味の数理工学という分野が自分の支柱となっているのはいろいろな研究をしていく中で実感しています。