数学系の学生にあるあるだと思いますが、20歳を過ぎると「あー、ガロアの死んだ歳を超えてしまった」という謎の嘆きを口走って、自分の凡庸さを改めて自覚することになります。
この本はガロアの史実も交えつつ少し脚色も加えたお話です。ただし数学者らしく、どこが史実でどこが創作かは明確にしています。ただ、個人的には史実かどうかにそんなにはこだわりがないので、例えば竜馬が行くはほとんど創作だというようなことはあまり気にしていません。
ガロアの3倍近くまで生きてきて、まず思うのは、果たしてガロアのような太くて短い人生を送りたかったのかどうかということです。また、ガロアはその生きている間には全くと言っていいほど正当な評価が得られませんでした。
一方自分を振り返ると、長年研究をやってきましたが、まあそれほど大した業績は上げなかった代わりに、自分の思っている以上に評価はしてもらっているように思います。
数学者あるいは一般に科学者は、新たな真理を切り開くこと自身に価値を見出し、人の評価など全く気にしないという態度にあこがれを抱きます。ただし、自分がそのような境地に至れるかというと非常に難しい気もします。結局のところ自分はなんのために研究をしているのかと自問自答してみると、答えはよくわかりません。なんのためとか関係なく、知的好奇心という人間の本能の赴くままに行動してきただけなのかもしれません。