松本元さんは私が電総研に入った時すでに超有名人でした。イカの巨大軸索の研究をするためのヤリイカの飼育に多くの年月を要したわけですが、それを長い目で許容した研究所の経営陣のおおらかさの象徴として語られていました。確かに今の産総研ではこのような研究をするのはほとんど不可能に思えます。
私の所属していた情報科学部はサルとかの実験をしていた山根さんなどの脳機能研究室がありましたが、松本元さんは超分子部という違うところにいらっしゃったので生活上の交流はほとんどありませんでした。理研に移られた後、その後の飯島さんとは栗田さん・田中さんと参加した科振費でご一緒しました。松本元さんも飯島さんも体育系で日焼けした印象ですごく健康的なイメージでしたので松本元さんが急逝されたときはとても驚きました。
松本元さんはいろいろなものを書かれており、ある特定のエピソードを強調して説明するので、一般向けとしてはとてもわかりやすくはあるのですが、研究としては若干それに引っ張られすぎたり、愛とかなんとか定義の難しいところに持って行ってしまうところが、若干宗教がかっていたという印象でした。このあたり直接考えをうかがうことができないのが残念です。