toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

Shun-ichi Amari "Diffential-Geometrical Methods in Statistics" Springer-Verlag 1985

自分の備忘録として始めたものですが、自分の過去よりも偉い先生のエピソードの方が需要がありそうなので今後はその辺も意識して書こうと思います。ちょうどこれを書いている前日に神経回路学会で甘利先生・福島先生・塚田先生というレジェンドがリアルに来られるというレアなイベントがありました。

 

私は今でもそうですが情報収集能力が弱いので、甘利先生がニューラルネットというので有名だということは知っていたのですが情報幾何をやられていることは全く知りませんでした。修士論文も連想記憶に関するもので情報幾何とは(少なくとも当時は)1mmも関係なかったのですが、研究室に長年いれば自然となんとなくどんなものなのかというのはわかってきます。ただ、私の代の修士では情報幾何関連の研究をやる学生はいませんでした。

 

たぶん倉田さんが長岡先生甘利先生と書かれたボルツマンマシンの情報幾何の論文が最初に読んだ論文で、甘利先生の情報幾何の直感的なイメージはもっていたのですが、まだ双対平坦性についても十分理解していませんでした。

 

手元にある本は電総研に入ってわりとすぐに買ったものだと思いますが、1990 年の Corrected 2nd printing という版です。全体はタイプライタで組版された昔ながらという感じの本ですが、最後の参考文献とかは現代風に組版された形で追加がされています。

 

タイプライタ組版は読みづらいですが、今でも情報幾何について入門するのに最適な本の一つだと思います。甘利先生のことですから、最初に確率空間を定義するようなことはしていません。こまごまとした正則条件は本質的なことを述べた後におまけのようについているだけです。そういう書き方もいかにも甘利先生という感じです。

 

なお、よくある話としては神経回路でも情報幾何学でも超有名人であるため、それが同一人物なのか聞かれるという笑い話もあるとのことです。

 

甘利先生は外国人とかのお客さんが来ると根津の車屋という居酒屋に連れていくというのが通例でした。私も何度か同席させていただいたことがあります。甘利研では学生だからと言って先生に遠慮することもなく、周りから見たら失礼と思われるような感じだったかもしれませんが、それくらい懐の深い先生だなと思います。