toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

笠原 晧司「微分方程式の基礎」 朝倉書店 1982

微分方程式の教科書として買った本ですが、微分方程式の講義をいつ受けたのかは忘れてしまいました。計数に進んでからは安定性とかの話をやりましたが、最初は初等的に解ける微分方程式の解き方をやったと思います。

 

最初は結構複雑な形の微分方程式がうまいトリックで解けることに快感がありましたが、その後いろいろ知っていくと世の中のほとんどすべての微分方程式は解けないのに、ある特定の解ける方程式を覚えることにどれくらい意味があるのかというふうに一時期思っていました。しかし、線形微分方程式をはじめ、解けることが重要であるような微分方程式を研究することは十分意義があると思えるようになりました。

 

これは微分方程式に限らず、統計力学イジングモデルとかもそうですが、解けるというのは意味があることだと思います。例えば世の中をモデル化するときでも、解けるモデルでうまく近似できればその後の計算や解析が圧倒的にやさしくなります。一般的な微分方程式論で言えることよりもずっと強いことが言えるわけです。一般性と特殊性のバランスというのは研究をしていて常に気に掛けるところです。

 

ところで、微分方程式の安定性はリャプノフの方法があって、最初はリャプノフ関数が微分方程式から構成的に作られるものだと勘違いしていました。昨日書いた統計学の自由度とかの話もそうですが、初心者がつまづきやすいところに配慮した教科書というのはあまり多くない気はします。自分もそうですが、すでに当たり前に思ってしまっていることは、文章を書くときに割とスルーしやすい傾向はあると思います。その点では、本のドラフトを読んでもらうのは全く分野を知らない人の方が有用な情報が得られる気がしています。