toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

久保亮五(編)「大学演習 熱学・統計力学」裳華房 1961

熱力学は高校でカルノーサイクルとかの計算をさらっとやった程度でしたが、熱機関のようなものが割とシンプルな原理で説明できることは面白いと思った反面、運動方程式のようにたくさんの問題を解いたわけでもないので、そんなに身につきませんでした。

 

大学に入って、熱力学や統計力学の授業がやたらと難しかった記憶しかなく、また、それほど興味もなかったので、なんとなく通過しただけでした。そのころ一応購入したもののほとんど問題は解いていなかったのが久保先生が編者のこの本です。久保先生は統計力学のちゃんとした教科書も書かれていますが、私の持っているのは演習の方だけです。

 

ニューラルネット情報理論の研究を通じて統計物理の研究者の方々とも交流していくうちに、だんだんと統計力学の知識が身についていき、彼らほどではないにしても統計力学的な現象や解析法に興味が持てるようになりました。そのうえで改めてこの本を見返すと面白いなと思えてきます。やはり全く知らない分野の本というのはそもそも面白いと思えるまでが大変なのかなということでしょうか。

 

演習形式の本のよいところは、通常教科書的に長々と説明されているものがコンパクトにまとめられているところです。もちろん教科書でしっかりとしたものを読むのも大事だとは思いますが、本当に大事な部分だけを抜き出してあるのは非常にありがたいです。

 

最近は問題を解くという作業自体、自分自身の研究以外ではなかなかしなくなっていますが、このような演習形式の本の問題を考えてみるというのは理解を深める意味でも大切だと思います。公務員試験の問題や放送大学の問題を作ったり、自分の本で問題を作ったりという経験をしてきて、大学の先生方には及びませんが、その大変さというのを実感しています。問題を解くことによってその分野の知識が深まるように考える必要があり、単に教科書的に解説するのとは違うスキルが要求されます。

 

機械学習でも鈴木譲先生の100問シリーズとかありますが、もっと演習主体の問題集があってもよいように思います。あんまり言うと藪蛇になるのでこの辺にしておきますが...