toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

H.Yanai, A.Okada, K.Shigemasu, Y.Kano, J.J.Meulman (eds) "New Developments in Psychometrics" Springer 2003

この本は 2001 年に大阪で開かれた IMPS (International Meeting of the Psychometric Society) という会議をベースに集められた論文集です。自分がどういう経緯でそこで発表することになったのか忘れてしまったのですが、カーネル正準相関分析(CCA)の話を発表しました。そこでオーガナイズドセッションのチェアか何かだったと思いますが、カナダのマッギル大の高根先生に気に入っていただけたようで、この論文集にも投稿するように勧めていただきました。

 

ただ、ちょうど博士の学位を論文博士で取ったばかりで気分的にやりきった感じがして疲れていたのと、カーネルCCA の話はカーネル法と正準相関分析を知っていれば自然に思いつくような話だったので、自分の中ではそれほど特別なものとは思わずに結局論文は出しませんでした。

 

しかしその後、カーネルCCAをほぼちゃんとした形で定式化したのが私の仕事で、かつ、当時流行っていたバイオインフォマティクスとかの分野でも使える手法ということで、Jean-Phillippe Vert さんから「どうやって citation すればいいんだ」という問い合わせを受けたりしました。私の論文は IBIS とかの予稿集に日本語で出したのが割と長いバージョンで、この会議ではそれを1ページの短い論文にまとめたアブスト集にしかありませんでした。Kernel Methods in Computational Biology という本では Proceedings of IMPS という形でそのアブスト集を引いてくださっていますが、そのアブスト集はほぼ入手不可能なものだと思います。

 

そこで、その後一応 IBIS を英訳したものを ArXiv にだけ載せて論文の形にはしました。それが、末谷さんや伊庭さんの研究で使っていただいたり、 Francis Bach さんとかのカーネル ICA とか福水さんの仕事とかどんどん発展していって、Google scholar では私の筆頭論文では一番 citation が多い論文となってしまいました。私は入口を開いただけで、その後のすごい方々の深い研究には大した貢献はしていませんが、研究が自分の思ってもみない方向で注目されたりするんだなあという経験になりました。逆に、自分が力を入れた研究とかが必ずしも注目されるとは限らないという方が多いようにも思います。