以前にも書いたと思いますが,電総研に入って数年してからはじまった RWCP という通産省のプロジェクトで多くの人たちと知り合いました.
この本の著者の Kanerva さんも RWCP に参画していました.彼の代表的な仕事である Sparse distributed memory に関する集大成的な本です.私も修士課程でスパース符号を使った連想記憶とかの研究をしていて,スパースにすることで記憶容量を向上させるというコンセプトはかなり似ています.ただし,Kanerva さんは統計力学的というよりは計算機科学のアプローチで,用語や説明の仕方はだいぶ違っています.当時はすでにニューラルネットがらみの話はやっていなかったので,この本は手元にありましたがほとんど読むことはありませんでした.今見ると,多少統計的な解析をしてアトラクタ半径とかを調べているようです.
Kanerva さんは RWCP のイベントで何度か日本でもご一緒しましたし,NIPS か何かの国際会議でもお会いしました.研究の議論の場とかでは時に頑固な一面も垣間見えましたが,私のような若造にはすごく優しく接してくださって,まだ学位を取っていなかったことを知ると気にかけてくださいました.
RWCP が終わってからは全く関係が途切れてしまいましたが,お元気でいらっしゃるでしょうか.