toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

松原望 「ベイズ統計学概説」 培風館 2010

ベイズ統計学については以前に Christian Robert の Bayesian Choice を取り上げましたが,日本語の本でベイズ統計について勉強するのに一番よかったと思うのがこの松原先生の本です.残念ながら松原先生とは面識はありません(というか多くの有名な統計学者のほとんどの方とは計数とかでつながっていなければ面識ありません).

 

大学時代はAIと統計が関係しているなんて夢にも思ってなかったので,統計っていう地味な学問に興味もなく全然勉強しませんでした.そもそも確率も中高の数え上げの謎スキルが要求される感じとか,統計で単に平均とか集計するだけで何が面白いのか全く分かっていませんでした.

 

松原先生のこの本は,ベイジアンにありがちな押し付けがちなところもなく,ベイズ統計の枠組みの中で導かれる面白い事実が淡々と語られています.この本を手にしたのは,すでにかなりの知識がついてからですが,それでも非常に学ぶところが多かったです.

 

先日取り上げた自由エネルギー云々みたいなのもそうなのですが,枠組みの一般性を売りにして宗教がかってしまうのが個人的には科学的な態度ではないように感じてしまいます.

 

ベイズの人たちにもそういう人たちが多いように感じます.自分でもセミナーとかでベイズの解説をするときは,ちゃんと長所と短所を公平にお話しするように心がけていますし,面白い部分というのは枠組みではなくそこから導かれる個々の定理やアルゴリズムにあることを強調しています.神は細部に宿るという言葉にもあるように,細部の面白さがわかってはじめて全体の枠組みの重要さがわかると思うのです.