toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

児玉慎三 須田信英 「システム制御のためのマトリクス理論」 コロナ社 1978

機械学習や統計では線形代数がいたるところで使われていますが,普通の線形代数の教科書ではさらっと扱われるようなことが重要だったりすることがあります.

その一つはベクトルや行列にかかわる関数の微分です.例えば重回帰分析を導出する際に,二乗誤差をパラメータベクトルで微分することを知っていると,式がすっきりしますし, tr(X^T X) とか det(X) とかの微分は多変量正規分布を扱う初期に必要なものです.

最近でこそ機械学習の本がたくさん出ているので,こういう内容を含めた本というのも数多くありますが,私が学生の頃はほとんどありませんでした.このシステム制御のためのマトリクス理論は,そのようなことが網羅的に書かれている貴重な本でした.

もともとは制御理論などで使うことを想定して書かれていたと思いますが,機械学習や多変量解析で頻繁に使う内容が出てくるので,ちょっと計算に自信がないときとかによく参照しました.

 

教養の線形代数ではあまり扱わない基本的なものとして,特異値分解とかもあります.放送大学機械学習概論IIではそれを意識して特異値分解の話をぶちこみましたが,少しやりすぎだったかもしれません.

 

この本では,日本語の「行列」と言わず「マトリクス」と呼ぶのは何かしらの意図があるのだと思いますが,最初はちょっと面喰いました.待ち行列 (queue) とかと紛らわしいからでしょうか.ただし,この本は制御特有の言葉はほとんど出てきませんし,どんな分野の人にも読みやすい本だと思います.

 

同じような本はそのあと何冊も出ているのでここでも取り上げると思いますが,とりあえずこの本が私にとっての一番のスタートとなる本でした.