昔はよく本の輪読というのをやりました。
この本は当時目新しかったウェーブレットの教科書で、亡くなられた田中勝さんやまだ電総研に入所されたばかりの本村さんとかといっしょに輪読しました。
田中さんは本当に最新の研究に対する嗅覚がすごくて、その辺り鈍い私は田中さんからいろいろなことを教えてもらいました。
ウェーブレットについては確か甘利研の夏の勉強合宿で博士課程にいた村田さん(現早大)が詳しく解説されていて、その話を聞くベースとしてこの本は役に立ちました。当時の甘利研は博士課程の学生が勉強合宿で一つのテーマについて二日間くらいがっつりセミナーをやるという伝統でした。博士課程に落ちた私はそれを経験することはできませんでしたが。
村田さんはウェーブレットのような積分変換の理論をニューラルネットの場合に構築して博士論文を書かれました。その話は後々園田さん(現理研)とかが受け継いでいくことになります。
この本で大して重要ではないけどよく分からなかったのは著者名の読み方です。臨港グループではなんとなくローマ字式にダウベッシーとかベタな読み方をしていましたが、ドベシーとかの方がたぶん近くて、Amazon を見るとドブシーと記載されています。
大学時代にフーリエ変換とか直交基底の話は多少やったものの、非直交基底とか多重解像度という観点は新鮮で、難しかったけど楽しく読んだ記憶があります。その後何冊かウェーブレットの本は買いましたがこの本が一番ちゃんと読んだ本です。
最近は、研究室でまとまって輪読することもほとんどなくなりました。専門分野が発散したり、みんな歳取ったり、何かと忙しくなったりして企画するのも難しくなったという感じでしょうか。