toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

渡辺澄夫「ベイズ統計の理論と方法」コロナ社 2012

渡辺澄夫さん(現東工大)による WAIC (Widely Applicable Information Criterion) は、機械学習統計学において最も重要なモデル選択の問題に対する最も偉大な成果と言ってよいと思います。この本では WAIC について詳しく知ることができるすばらしい本です。

 

渡辺さんと初めてお会いしたのは 1992 年の日本神経回路学会だと思います。その頃は、まだ福水さんと同じくリコーに所属されていました。そのときはまだ石井さんは知らなかったのですが、改めて当時のリコーにはすごい人たちがいたんだなと思います。

 

その神経回路学会には、今親しくさせてもらっている萩原さん(現三重大、当時豊橋技科大)が特異モデルについて発表されており、その後渡辺さんを含めて特異モデルの研究が発展していくことになります。なお、萩原さんと親しくなるのはまだだいぶ後なのですが、これもいつから親しくなったのかいまいち覚えていません(笑)。

 

WAIC は特異モデルに対しても適用可能な情報量規準ということで(AIC と同じく後世には渡辺情報量規準と呼ばれそうではありますが)、すごく画期的ですが、世の中では過大評価または過小評価されているようにも思います。

 

過大評価と言っているのは、WAIC に限らずモデル選択という操作自身のもつリスクでもあるのですが、選ばれたモデルを(絶対的)真実であるかのように扱ってしまう使い手側の問題で、何か万能なものを手に入れたという扱いを受けやすいという点です。

 

一方、過小評価については、渡辺さんがこの辺りの研究を発表したころは、理解できる人が少なくて、国際学会やジャーナルでもなかなか評価されてこなかったという歴史があります。今でも国際的な認知度はいまいちだと思います。まあ偉大な仕事が往々にして通る道ではあるかもしれません。

 

そんなすごい渡辺さんですが、私のようなものにも目をかけていただいて、通信学会のチュートリアルから森北出版の本にまでなったり、数理科学の特集号で指名していただいたり、東工大客員教授をさせていただいたときも、実質渡辺先生に間借りしていたような感じでした。本人には届かないと思いますがここで感謝の意を表したいと思います。