一応数学っぽい仕事はしていますが,どれだけ経ってもわかった気にならないものがあります.それが微分形式で,この本では数学的な厳密性は保ったままわかりやすく微分形式を説明しています.なので概念として理解はしているつもりですが,自分の論文でとても使える気はしません.
これは英語のリスニングとスピーキングの関係に似ています.リスニングすることはできても自分でその表現を使うのが難しいということはよくあります.本来スピーキングは難しいはずですが,英語をずっとやっていると意外にスピーキングが簡単に思えるのは,難しい表現とか一切使わずに話す技術を覚えるからで,逆にそれを覚えてしまうと凝った表現とかできなくなります.
情報幾何は微分幾何がベースなので,本来微分形式とか使いまくることも可能なのですが,ノンネイティブスピーカーのように,自分のものになっていない記法を使うことにどうしても抵抗感が出てしまい,結果的に慣れ親しんだ初等的・古典的な記法で書くことに落ち着きます.
そもそも解析力学も,ハミルトン形式とラグランジュ形式の使い分けみたいなのはいまいちわかっていません.情報幾何だと双対座標はルジャンドル変換に対してほとんど対等なのでどっちがどっちということはないのですが,力学でも同じと思っていいのでしょうか.なんとなく ハミルトン形式の方が便利に使われている印象がありますが,この本をちゃんと勉強すればその辺の感覚も見につくのかなと思います.