toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

V.V.ヴァジラーニ「近似アルゴリズム」シュプリンガーフェアラーク東京 2002

計算数理工学は杉原厚吉先生だったと思いますが, P-NP 問題の説明で,この問題に挑むのは無謀というようなお話だったと思います.これは杉原先生に限らずかなり多くの人の考えでしょう.

 

この本は近似アルゴリズムの本ですが,常に計算量と近似度合いが定量評価されているたぐいの本です.一方,ソフトコンピューティングと呼ばれる分野では特に計算量とか近似度合いとか何も評価せずベンチマークだけで評価されるようなことも横行しています.

 

ただ,実際は難しい点があって,計算量と近似度合いを評価できる問題のクラスはかなり限定的で,そこに絞るのは狭すぎるという考えもできます.ただし,そこはスポーツのルールのようなもので,それを守りながらがんばるというのは一つのスタンスです.ただし,計算量や近似度のバウンドも実用的かと言われるとそこは微妙な場合も多いです.機械学習だと一時期劣モジュラ関数最大化のバウンドが 1-1/e となるというような話がありましたが,これも実用上の近似度からはかなり遠い(したがって逆に実用的)という話もあります.

 

一方そういうのを何もなしでとにかくアイディアだけでアルゴリズムを提案するというのは一見易しそうで,実際に実用に供するアルゴリズムが生み出されるのは,それこそゴミの中から宝を探すような話で大変だと思います.結局どういう分野でも政治家みたいな問題のない学術的な分野で研究していくのはそれなりに大変だということだと思います.