toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

下條信輔「視覚の冒険」産業図書 1995

この本はランダムドットステレオグラムを出発点として、視覚にまつわる研究動向などについてエッセイ風にまとめた本です。下條先生は1,2回何かの講演をお聞きした記憶ぐらいしかありませんが、話が上手でこの本も非常に読みやすいです。とりあえずその能力が単純にうらやましいです。

 

ランダムドットステレオグラムはいろいろ本も出ていますが、私はこれが非常に苦手です。たぶん視線方向に若干のずれがあり、視力にも左右差があるので、自分は視差を利用した立体視はほとんどやっていないと思います。一方で目は大きい方なので、視線のずれがわかりやすくて、それと無関係ではないと思いますが流し目してるとか言われていたこともあります。

 

この本では、視覚にまつわるいろいろな研究を短く切り取って一般の読者向けに紹介するというスタイルです。なので、個々の研究についてそれほど詳しいわけではありません。以前取り上げたミンスキーの心の社会と同じようなスタイルですが、それをぐっと薄くした本というイメージです。

 

洋書と和書では、標準的な本のサイズ感が異なるので、教科書とかもその影響を受けます。ビショップ本を訳したときも2分冊になりましたし、洋書は枕にできるような大きい本がありますが、和書でそれをやるとほぼ辞典類と同じような扱いをされてしまうので出版社としては避けたいのではないでしょうか。訳本だとどうしてもそうなりやすいですが。

 

視覚については電総研時代から山根さんをはじめ、菅生さんなど関わっている人が多いので、いろいろな知識は増えました。とはいえ、脳科学情報科学の融合というのは難しいなというのはずっと感じてはいます。山根さんと言えば、電総研に入所してわりとすぐにある件でご挨拶に行ったときに「研究者は1に研究2に研究、3,4がなくて5に研究してください」と言われたことを思い出します。今は環境も変わっていますし本人の自覚という意味でも、そこまでストイックに研究だけに打ち込んでいる研究者の人は少ない気もします。