toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

高橋渉「非線形関数解析学 不動点定理とその周辺」 近代科学社 1988

私が大学にいたころ複雑系など非線形現象に対する関心が高い時期でした。私もなんとなく非線形を知りたくなってこの本を手に取ったと思います。ただ、まだその頃関数解析もよく知らない頃で、かなり読むのに苦労しました。

 

ニューラルネットワーク非線形変換ですし、機械学習の多くは非線形モデルで、線形では全然だめという浅い認識でした。ところが、そこからサポートベクターマシンという線形によって非線形モデルを構築するものが出てきたり、情報幾何も曲がった空間を平坦なアファイン空間とみなすことによって見通しがよくなるなど、結局非線形現象を線形に帰着させているということが少しずつわかってきます。

 

もちろん非線形のままいろいろ解析する技術もあると思います。この本で扱われているような不動点定理は線形性に帰着させることでは得られない非線形ならではの顕著な性質で面白いとは思います。ただ、線形ではだめだという認識はいかにも浅かったなと思い返します。ニューラルネットすらニューラルタンジェントカーネルという線形システムで近似することで理論解析が進んでいます。

 

非線形というのは線形でないという補集合のような言葉なので、自由度が高すぎて不動点定理などの一部を除いて一般論を展開するのが難しいです。もちろん、例えばソリトンやカオスのように個別に面白い現象を解析することはできますが、自分自身は線形に帰着させることでより幅広い解析が可能になったように感じます。