toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

永尾 太郎 「ランダム行列の基礎」 東京大学出版会 2005

機械学習モデルの解析のための力強いツールの一つはランダム行列の固有値の分布です。特にマルチェンコパスツール則やウィグナー則のように、相関行列のような機械学習で典型的に出てくる行列にランダム性を課せば、きれいな固有値分布が得られるというのは理論解析において非常に有用です。

 

ということで、最初に買ったランダム行列の本がこの永尾先生の本でした。残念ながら私は永尾先生とは直接の面識はありませんが、この後に出た機械学習関係者の人たちも執筆しているランダム行列の本でも永尾先生が書かれている章があり、専門家間では交流があるようです。

 

ただし、こちらの本はいきなり最初の章が四元数ということで、かなり面食らう本です。ランダム行列の固有値を求めるという動機付けもほとんどないので、かなり我慢して読み進める必要があります。まあ題名に「基礎」と書いてあるわけなので、応用とかは特に意識しない数学書という体で書かれているということでしょう。ということで、実際のところ機械学習の理論解析への応用に興味があった私はそこまでの気力がなくて四元数のくだりは完全に飛ばして、ランダム行列の固有値分布が求められる仕組みだけをざっくりとなぞった程度です。