toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

西山陽一「マルチンゲール理論による統計解析」近代科学社 2011

人工知能学会で、ひそかに書いているこのブログも少しばかり知られてしまったようですが、まあマイペースで書いていきます。それより、だんだん思い入れのある本が減ってきて、まだ読んでない本に突入して、依然として毎日更新できるのかがちょっと不安です(さすがにまだしばらくは大丈夫だと思いますが)。

 

さて、マルチンゲールについては電総研に入ってから知ったのですが、最初は何のためにこういう概念を考えたのかあまりわかっていませんでした。かなり後になって stochastic approximation の収束をマルチンゲールを使ってすっきり証明されているのを読んで美しいと感じました。

 

西山先生とは直接の面識はありませんが、ibis で企画セッションか招待講演で講演されていて、内容はかなり難しかったのですが、強烈に記憶に残っているのは、聴衆からの質問で「応用は何がありますか」という質問に対して、「この定理の系(corollary)は…」と回答されているのを聞いた時です。この発言を聞いて西山先生すごいなと思いました。

 

Amazon の著者紹介によると私よりも少し年下ということを知り、さらに驚きました。あまり細かくは記憶していませんがすごい風格があったように思います(自分に風格がなさすぎなのですが)。

 

あと、割と最近、職場で中心極限定理の一般化だったか(ちょっと手元に本がないので後からこの部分修正予定)を聞かれたときに、この本に載っているのを発見して、結構重要な話がたくさん載っているのだなあということを認識しました。

 

西山先生の発言や、人工知能学会の杉山さんの招待講演を聞いて改めて思ったのは、基礎理論と応用は短絡的に結びつけようとしない方が健全だということです。産総研なんかでもありがちなのですが、あらかじめ応用を想定した基礎理論しか認めない風潮は科学の発展を狭めて、長期的に見れば遅らせることになると思います。