toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

田中豊,脇本和昌「多変量統計解析法」現代数学者 1983

電総研に入って多変量解析の勉強を始めてしばらくして,この本に出合ってやっと多変量解析の全体像がつかめました.今となっては古い本ですが,本の構成や書いてある内容は今でも通用する内容だと思います.

 

まず,目次の後にフローチャートがあって,解析の目的や量的・質的などによってどの手法を使えばいいかというのが一目瞭然となっています.また,当時大津さん・麻生さん・栗田さんとかが数量化の解釈についての仕事をされていて,数量化のすの字も知らなかったので,この本がかなり助けとなりました.ただし,今では数量化という言葉はほとんど死語となってしまいました.自然言語や分子構造などより複雑な対象に一般化されていくうちに数量化とは呼ばなくなっていったということでしょうか.ただし,学習初期に知っておくのは今でも有用なのではないかと思います.

 

主成分分析と因子分析についての記述は最初よくわかっていませんでした.いまどきの行列分解という観点で言えばその違いは曖昧になってしまうので,よくわからなかったというのも今となってしまえば自然な反応かなと思います.その違いというよりも次元縮約なのか生成モデルなのかという方向性を認識しておくことが本質的な気がします.

 

あとは,昔の統計学の本にありがちな数表が巻末についていて,今では完全に無用の長物という感じです.ということで,最近ではめったに読むことはなくなってしまいましたが,本棚を整理していて懐かしかったので取り上げてみました.