Deep blue がカスパロフに勝ったのが 1996 年なので、その少し前に書かれた本になります。チェスについては、割と伝統的な探索的なアプローチで計算機パワーにものを言わせて強くなったというイメージでした。実際最初のころはそうだったのでしょうが、最近の話をいろいろ調べると、同じくらいの強さのチェスプログラムがずっと少ない探索回数で実現しているということが書いてあったので、探索にもいろいろな進化が続いていることがわかります。
この当時、囲碁や将棋はまだまだという感じでした。将棋については電総研の松原さんがかなり研究されていて(中身はよく知りませんが)プロ棋士の飯田さんという方を招聘していらっしゃったことは伝聞で知っていました。
現在、大規模言語モデルや画像生成AIなどの主な開発プレイヤーは GAFA のような超大企業です。Deep blue も IBM で、計算パワーにものを言わせる開発ができるのはこのころからもはや大企業でしかできないのではという感じです。大学や研究所では、より本質的な研究を小さいスケールでやればよいとは思うのですが、大規模言語モデルのようにやたらと単純な仕組みで高度な知能を生み出すというようなものは、学習モデルと学習データがとてつもなく大きくなって初めてできることなので、ちまちました研究所ではもはや不可能にも思えます。
実際、大規模言語モデルの研究では、もはや学習された GPT のような学習モデルありきで、それをどう活用したり分析したりするかという研究が多くなってきたように思います。それは果たして本質的な研究なのかという疑問は常に残りますが、こういう時代に研究テーマを見つけるのは大変だなあと思います。