toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

野呂正行、横山和弘「グレブナー基底の計算 基礎編 計算代数入門」東京大学出版会 2003

確か藤木さんとの研究だったと思いますが、コンピュータビジョンのある種の問題が多変数の4次方程式を解く問題に帰着されるというような研究をしたことがあります。だいぶ前に塩漬けにしてしまったので詳細は忘れましたが、その時に、それを解くヒントとして、グレブナー基底を少しだけ勉強しました。

 

どうして塩漬けにしてしまったのかすら忘れてしまいましたが、『単に連立方程式を与えるとグレブナー基底を求めてそこから解を出してくれる』というタイプのツールがなくてそのまま自然消滅してしまったように思います。(その後調べたところ、グレブナー基底ベースのコンピュータビジョンの研究は結構あるようです)

 

世の中には技術があってもツールがないと広まらないものというのがある気がします。ツールの開発は新たな知見を生み出すという学術的な意味での研究ではなくて、いわゆる社会実装というものに相当します。研究者の中にもツールの開発にも熱心な方はいらっしゃいますが、グレブナー基底をググってもグレブナー基底を求めるツールとして、この本の続巻で紹介されている Risa/Asir というのがありますが、我々がふだん使っている Python/R/matlab なんかで、連立方程式の係数を与えると解のリストを出してくれるものは見つかりませんでした(少し調べたところ pysym を使えば今は多少手だてがありそうです)。

 

この本を読むとわかるように、グレブナー基底は必ずしも連立方程式の解を求めることだけが目的ではないので、その辺も関係しているかもしれませんが、ユーザとしてはそういうツールが身近な言語で整備されていたら便利だなと思います。そういうツールがないと、安易なやり方としては Newton 法とかで探索的に解を求めることになりますが、せっかく多項式ですべての解がちゃんと求められるのであればそれを使いたいなという気持ちになります。