toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

神嶌敏弘(編)「深層学習」近代科学社 2015

深層学習という名称はすっかり定着していると思いますが、ディープラーニングにこの訳語をつけたのは神嶌さんだと思います。この本のベースとなった人工知能学会誌の2013年5月号の特集号の冒頭で神嶌さんと松尾さんの連名でこの訳語を使うということが書かれています。たぶんその原稿を出す段階で、神嶌さんが私の部屋に来て、ディープラーニングの訳語を深層学習にしようと思うというようなことをおっしゃっていたのを記憶しています。松尾さんは機械学習コミュニティの方ではなかったので何をやられた方なのかよく知らず、産総研AIセンターの立ち上げの時に少しお話した程度の面識しかないので、はっきりとはわかりませんが、深層学習の名付け親は神嶌さんといっていいと思います。たぶん今後辞書にも載るような言葉を考えるのはすごいと思います。

 

神嶌さんといえば、圧倒的な知識量と先見の明で学会とかでは有名ですが、産総研内での評価はそこまで高くありません。産総研に限らないかもしれないですが、この辺の表面的には見えないことは評価する能力が全く欠如していると思います。

 

神嶌さんはもともと電総研では推論研究室で佐藤泰介さんとか松原さんとか伊庭斉志さんとかがいたところで、離散的な古典AIの研究室でした。博士論文を書かれたクラスタ例の学習という話も今の半教師あり学習のさらに先を行く研究でしたが、そのあたりから研究に関わらせていただくようになり、産総研になった時に私の研究グループに移ってこられました。その前に、Mr.Bengoという法律AIのデモシステムのお守とかをやらされていたという話を聞いて、まあひどい話だなと思いました。

 

データマイニングが流行っているとか、それ以外にも twitter とか wiki とかも神嶌さんから教えてもらいましたし、朱鷺の杜のアイディアを出したら速攻で pukiwiki にしてくださいました。順序データの学習とか、プライバシー保護データマイニングとか、とにかく日本で一番早く目をつけて研究する先見の明は私にはとうていできません。公平性の話はどこかにも書いたと思いますが、これだけインパクトのある研究も産総研ではほとんど誰も知りません。

 

神嶌さんは先見の明はありますが、早見えすぎてたぶん普通の人には説明が難しいのを、私が素朴な質問をぶつけまくって、少しだけですがわかりやすく整理する手助けができたのではないかと思っています(というかそれくらいの貢献しかしていません)。一つのテーマを深く掘り下げて、難関国際会議に落とされても何度も挑戦する姿も、浅くいろいろなものに手を出して、手ごろな国際会議で満足してしまう私にはない長所だと思います。