toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

江沢洋,上條隆志「物理学と数学」江沢洋選集IV,日本評論社 2019

江沢洋先生のコラムなどをまとめた本で,どこかの本屋でたまたま見かけて面白そうだったので,後から研究費で買いました.江沢先生はいろいろなところに書かれていて,私のような物理素人でも目にする機会は多いのですが,物理学の中でどのような位置づけの方なのかは正直あまり知りません.

 

自分もちょこちょこ解説など書かせていただくとが多くて,正直筆が遅いのと,研究者としてのステータスとしてはそれほど重要でないのもあり,お断りするケースもあります.ただ,分野のすそ野を広げるという観点ではこういう解説記事も大切にしないといけないと思うので,今後はできるだけ引き受けるようにはしたいと思います.

 

この本の中で最も面白かったのは,数学者・物理学者の座談会記事で,山内恭彦・小平邦彦・高橋秀俊・江沢洋の4名で物理から見た数学というタイトルです.失礼ながら山内先生については存じ上げなかったのですが,いろいろな観点が描かれていて勉強になりました.表面的には,物理は適当で数学は厳密とかそういう部分はあるんですが,ここで議論されているものはもう少し深くて感覚と論理のカルチャーの違いとかそういう話が書いてあります.機械学習脳科学なんかでも数学者や物理学者が入っていますが,議論がかみあわなくてまどろっこしいと感じることもあります.

 

この話を広げると,工学と理学というものがあって,誤解を恐れず単純化すると,工学は作るための学問で,理学はこわして調べる学問だと思っています.これについてはいろいろ考えていてあまりまとまってはいないのですが,今後ぼちぼち書いていこうと思います.

 

とりあえず自分の立ち位置をふりかえると,数学・物理でいえば数学(物理寄り),工学・理学でいえば理学(工学寄り)という感じでしょうか.共感できたり興味がわくのは数学なんですが,方法論としては物理な感じですし,深層学習みたいなアーキテクチャエンジニアリングして性能を挙げるというよりは,同じ工学的な対象でも性能を理論解析したり,アルゴリズムを作るにしてもできるだけ理論的必然性を重視していて性能は度外視している気もしてます.性能というのは,チューニングで微妙に上がったり下がったりするので,そこに一喜一憂せず本質的に重要なところを理解したいというのがあるからだと思います.