toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

森泰親「制御工学」コロナ社 2001

今日は制御理論の本.

計数工学科には制御の先生もたくさんいて,講義もあったのですが学部時代はあまりちゃんと勉強してきませんでした.

この本は手元にたまたまある制御の教科書で,冒頭に工学系大学生1~2年生向けと書いてあるのでまあ標準的な本なのだと思います.著者の森先生は全く存じ上げないですが,文章を読む限り非常に平易で,変に主張を押し付けてくる感じもなく好感が持てます.

 

ただ,この本に限らずいきなり定義とかが出てきて,なんでその定義をするとうれしいのかというような動機づけがないと初学者は面食らうところがあります.あとなぜ制御ではフーリエ変換ではなくラプラス変換を主に使うのかとかそういう説明は欲しいです.

 

制御理論というのは不思議な分野で,可制御性とか可観測性とかほかの分野ではあまり出てこない概念が出てくるかと思えば,(時系列を扱うので当然だが)リアプノフ関数とか安定性のように微分方程式とか物理学で学んだ普通の概念もたくさん登場します.

あまりよく知らない学問を学ぶときはとりあえず自分の知っている知識にひっかかるところを手掛かりにしていくと思います.「○○学者のためのxx入門」みたいな本がたくさんあるのもそのためでしょう.

 

機械学習とかをやっていると,確率統計はもちろん制御理論や情報理論,最適化や関数解析などいろいろな知識が必要となります.各分野は独自に発展してきた歴史をひきずっているので,同じ概念でも違う言い方をしたりすることがあるのでそれに適応することが必要となります.ややこしいのでなんとか統一してほしいなと思うことも多いですが,ヨーロッパに似たような言語があるのと同じように完全に統一するというのも難しいのでしょう.

 

言葉だけではなく分野によって重きをおく価値観みたいなのも結構違っていて,言葉の定義よりもそっちの方が面倒かもしれません.例えばこの本には出てきませんが,ロバスト制御という考え方があって,これは統計機械学習でいうロバスト推定とは別物であるというのはちょっと頭が混乱します.