toddler’s diary

以前は研究にあまり関係ない雑談・2023年4月から本を通じた自分の振り返りやってます

室田一雄「離散凸解析の考え方 ー最適化における離散と連続の数理ー」 共立出版 2007

もともと室田先生が書かれた「離散凸解析」の解説本としてご本人が執筆されたものです.元本をもっていないのでわかりませんが,数学的にはこちらの解説本で私としては十分な感じがします.卒論で離散数学を少しだけかじったし,機械学習でも劣モジュラとかが流行りつつある頃だったのでこの本を購入しました.

 

室田先生は私が修士の頃は甘利研の助教授でしたが,研究分野が少し違うこともあり,研究の中身ではほとんどご一緒することはありませんでした.ただ,いろいろ縁もあって,海外出張でドイツに立ち寄った際にはボンでお会いしたり,そのほかにも時折お話する機会はありました.

 

研究に対するストイックな姿勢や,日本の大学における無駄な会議などを批判する合理性などは,若い研究者の憧れの姿でした.たぶん最後にお会いしたのは甘利先生の文化功労者か何かのお祝いの席だったと思いますが,実は,私が新たにクロアポで所属した統数研の大学統計教員育成センターの特任教授もされているので,もしかするとまたお会いする機会があるのではないかと密かに楽しみにしています.

 

この本でも,無駄な記述はほとんどなく,すっきりと理解できます.学部の頃,以前取り上げたマトロイドの本とかを読んで,そうした枠組みがどうしてうれしいのかいまいちわかっていませんでしたが,室田先生のこの本を読んで,離散凸という観点で高い視点から見てみるとすごく見通しが良くなるのだということがわかります.(完全に理解できているわけではないのですが...)

離散凸関数を定義するところで「(凸拡張性に基づく定義は)定義としては論理的矛盾を含まず,まったくもって正当であるが,豊かな成果を生み出さない」という部分はいろんな枠組みの価値を定めるうえですごく重要な考え方だと思いました.